2005年01月08日

年間ベスト 棚卸

世間の年間ベスト熱はひと段落ついた感がありますが、ぼくはまだまだ引っぱります。

実はWebサイトやblogを始める前から年末になると「年間ベスト・アルバムの選定」という恒例行事に興じてきた。1996年からやっているので、もう10周年間近だ。会社の音楽好きな先輩と各々が厳選した年間ベスト・アルバムのリスト(各アルバムから1曲ずつをチョイスしてコンピMDまたはCD-Rを作る)を交換し、感心したり批判したりしながら1年間の音楽活動(受け身専門)を総括する、というなんとも小さな世界の自己満足的な企画ではあるけれど、データが蓄積されていけば、過去を振り返ってみるのもそれなりに楽しい。「これは良く聴いたなあ」というのもあれば、「なんでこんなの選んでんだ?!」というのもある。あと40年は続けて老後の密かな楽しみにしたい。

そのリストをHDDの奥底に埋もれさせておくのもいいけれど、blogという遊び場も手に入れたことだし、せっかくなのでココに記録しておくことにする。時代を遡るかたちで1996年まで。なんとかやり遂げようじゃありませんか。老後のために。

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2004年12月28日

年間ベスト・アルバム 2004

「大掃除」も終わったことにしたし、「年越し蕎麦」の準備もしたし、残す暮れのイベントといえばあとは「年間ベスト」だけ。夏休みも修学旅行も期末テストもない今の生活、コレをやっておかないと区切りがつかないのだ。


01. 窓に地球/キセル
2004年のピカイチはキセルだった。飄々とした歌を肉付けする練った歌詞と緻密なアレンジ。スキだらけに見せて実は死角なし。宇宙から見た地球にはトカゲが走り、エノラ・ゲイが飛ぶ。うららかで幻想的でありながらどうしようもなく日常的、という離れ業をやってのけた傑作。「C」「C」「C」「D」の4文字だけが唯一の弱点。







02. Ten Paces/The Baker Brothers
時代錯誤もはなはだし過ぎて時間軸をフッ飛ばしてしまった英国産インスト・ジャズ・ファンク集団 ザ・ベイカー・ブラザーズは、おそらく2004年の最多回転賞。つまるところ「好きなコトやったもんが、勝つ」という無骨で逞しい説得力。次作にも期待できるかどうかが最大の不安だ。

03. End of the World Party (Just in Case)/Medeski Martin & Wood
より深く、濃密に、グシャグシャに、が『Combustication』(1998)以降のメデスキ,マーティン&ウッド(MMW)の方向性だったと思うのだけど、今回のMMWはきわめてスッキリと聴きやすい。あり得ない魔球を駆使した後の渾身のストレート。直撃注意。ネットで無料で(合法的に)入手することができる凄まじい量の凄まじいライヴ音源と合わせて考えれば、やはり2004年はMMWの年だった、ということになる。少なくともぼくにとっては。

04. Black Mahogani/Moodymann
05. Black Mahogani II/Moodymann

MMWに引き続き、今年のムーディマンもたいへん耳馴染みがよろしい。ソフトなタッチでジャジィにいたぶる。…などと思ったのも束の間、結局行き先はいつもと同じエロスとカオスの桃源郷だった。「I」「II」セットで聴いていたら、どっちの何曲目を聴いているのか判らなくなり、ついでにどこが終わりかも曖昧になって、何度でもリピートして聴くハメになった。

06. パブロの恋人/小島麻由美
いまのところ小島麻由美に期待を裏切られたことはない。最初は小ぶりな作品に思えたけど、ひとたび首根っこ掴まれてしまえばあとはもうズブズブと…。初期の作品と比べると、力の抜け具合がますます完璧に近づいている。フル・アルバム初の写真ジャケも“らしい”としか言いようがない。

07. Sonic Nurse/Sonic Youth
インディ界の王者 ソニック・ユースがメジャーに殴り込みをかけてから早幾年。雨あられと降り注ぐノイズの絨毯爆撃的アンサンブルは、もはや円熟の域。トンガったまま円熟しちゃうところが凄い。一貫したスタイルを頑なに磨き上げていくその姿勢にはひたすら敬服するしかない。それでいてオヤジギャグなみのタイトル、というところがまたニクい。

08. LION/奥田民生
フィニッシュ・ブローと呼べるような曲がない代わりに、今回は「線路は続かない」,「歯」,「コアラの街」といったギミック的な曲の出来が良いので、全体的にスキのない仕上がりになった。「コアラの街」なんてかなりの奥田民生的名曲だと思うのだけど、どうだろうか。チャーリー・ドレイトンの仕事も気に入った。ちなみにマーク・リボー(g)は「線路は続かない」と「サウンド・オブ・ミュージック」に参加。言われなきゃワカランけど。

09. Power Of Soul: A Tribute To Jimi Hendrix
トリビュートだからってナメちゃいけない。まさかこれほどの愛聴盤になるとは自分でも驚いた。プリンスもブーツィもランドルフも演奏時間が全然足りてねー、と思ったけど、トリビュート作は「制限時間内に持てる個性をパッケージ化するコンテスト」のようなもの。贅沢を言ってはいけない、と考え直した。コンテストの優勝者はアース,ウインド&ファイアで決定。とにかく、何の気兼ねもなくジミ・ヘン・マナーのギターを弾きまくることができるギタリストさん達はとても楽しそうだ。

10. 七曲入/大西ユカリと新世界
丁寧に歌いすぎるのがたまにキズ、な大西ユカリだけど、“昭和歌謡”を単なるスタイルとして取り入れているやっつけミュージシャンとはやはり格が違う。「好きでやってんねん」という気概がしっかりと円盤に刻み込まれている。「七曲入」といいながら、ボーナス・トラック満載、サービス精神満載の全15曲。清々しくて、頼もしい。


2004年の後半はパッタリと新譜を聴かなくなってしまった。bt.etree.orgLive Music Archiveで無料で手に入るライヴ音源が充実しすぎていて、新譜を聴いている余裕がない、というのがその理由。このダウンロード熱はまだ当分続きそう。MMWのツアーの音源が毎日のように手に入るというのは凄いことですよ。インターネット万歳、テーパーさん(ライヴを録音して配布してくれるありがたい方々)にも万々歳、です。

10選から漏れたところでは、ザ・ダーティ・ダズン・ブラス・バンド,チャーリー・ハンター,アニ・ディフランコ,クレイグ・テイボーン,バッドリー・ドローン・ボーイ,ウォズ(ノット・ウォズ)やダニー・ハサウェイのリイシューもの等を愛聴しました。

以上、おしまい。2004年よ、さらば。

投稿者 nill : 01:30 | コメント (0) | トラックバック

2004年12月19日

年間ベスト・ミステリ 2004

ミステリ小説、2004年の私的ベスト5。ただし選定対象は、“2004年に読んだ”ミステリであって、“2004年に出版された”ものではないことを予めお断りしておきます。


    


1. ファイナル・カントリー/ジェイムズ・クラムリー [ハヤカワ・ノヴェルズ]
チャンドラーを別格として据え置けば、クラムリーこそが当代随一のハードボイルド作家であり、極端に寡作だけど打率9割9部9厘のぼくのアイドルである。もはや「お爺ちゃん」の領域に踏み込みつつある主人公ミロは、酒に女にクスリにと相変わらず破天荒極まりない。誇り高き男などでは決してなく、最後の一線を踏み越えていないだけのただのロクデナシだ。でもその土俵際のふんばりが胸に沁みるのだ。芳醇なハードボイルドのエキスがしたたり落ちる快作。クラムリーを未読の人に「この作品を読め!」とは言いません。「クラムリーは、全部、読め !!」

2. ボストン、沈黙の街/ウィリアム・ランディ [ハヤカワ・ミステリ文庫]
一昨年高評価だった作品。『ボストン、沈黙の街』というそそられない邦題のおかげで手を出すのが遅れたが、これはとんでもなく面白かった。流れるような展開と効果的な挿話にただならぬ“技巧”の匂い。善にも悪にも転び得る人物造形もお見事。これがデビュー作だってさ。おそるべし。次作に期待が高まる。

3. 心の砕ける音/トマス・H・クック [文春文庫]
なんとなく縁がなかったクックに初挑戦。きっかけは状態の良い本書がBOOK-OFFにて100円で手に入ったから。全編に漂う“暗さ”には好みが別れそうだけど、ぼくはとにかく美文に酔った。翻訳というフィルターを通してなお香り立つ才気。これが100円とは、なんだか申し訳ない。

4. 推定無罪/スコット・トゥロー [文春文庫]
わが家の本棚に鎮座すること10余年。積読の象徴だった本書を読み上げたことは2004年の小さな小さな個人的トピックなのです。法曹界を舞台に展開される灰色の人間模様。10年寝かせた甲斐があった濃厚な物語。傑作、だと思います。

5. ワイオミングの惨劇/トレヴェニアン [新潮文庫]
すっかり死んだとばかり思っていた寡作の覆面作家の驚きの新作。『シブミ』や『夢果つる街』といった過去の名作に比肩し得る作品、とは思わないけど、トレヴェニアン節は充分に堪能できる。特に長すぎるエピローグがツボ。


以上、全員外人。国内物を読んでいなかったわけじゃないけど、今年はインパクトに欠けました。そして例年と同じく、「来年はもっとたくさん読もう」と心に誓ってしめくくり。

※この記事は「mixi」のコミュニティ「このミステリーはすごい?」に投稿した記事を転載したものです

投稿者 nill : 04:41 | コメント (0) | トラックバック

2004年01月05日

年間ベスト・アルバム 2003

2003年の愛聴盤10選。本当にお世話になりました。



01. 愛のポルターガイスト/小島麻由美
昭和歌謡の毒と華を血肉と化し、とどまるところを知らないパワー・アップぶりで、もはや怖い者なし。カリスマ性さえ垣間見えるのは気のせいだろうか? 演奏陣とのコンビネーションもイイ感じ。#5「ハードバップ」なんてカッコ良すぎですよ。



  

02. Dime Grind Palace/Sex Mob
「Why?とJazz」などというサイト名を冠しているにもかかわらず、10作中唯一のジャズ。よかった、ジャズを選べて(汗)。スティーヴン・バーンスタインのスライド・トランペットが繰り広げるルーズな音空間は、2003年後半の夜の定番でした。構成もコンパクトにまとまっており、パッケージとしても優秀。意味もなくニヤリと口元を歪めたい気持ちになる。

03. Evolve/Ani Difranco
歌自体の魅力もさることながら、アコギとホーンが生々しく絡みつくアンサンブルの艶っぽさはただごとじゃない。恐いくらいの説得力に背筋も凍る。はたしていつまでこのハイ・クウォリティを持続できるか。次作も(超)期待。

04. I WAS THERE, I'M HERE/鈴木祥子
デビュー15周年記念弾き語りライヴ・ツアーをパッケージングした2枚組ライヴ音源(3曲入りボーナス・ディスク付)。その日、その時、その場所にいてしか体験できないはずの楽しげな空間が脳内に広がる。名古屋公演のチケットを取り損ねたことは2003年最大の悔やみ事。


  

05. Live At The Wetlands/Robert Randolph & The Family Band
ランドルフの暴れっぷりは2003年の最重要トピックだった。数多のセッションでさんざん前フリされ、「もっと聴きたいストレス」が沸点に達した頃に、初リーダー作をライヴ盤でド───ン!とリリース。完全に手玉にとられました。アッパーに攻めまくる内容も “痛快” のひとこと。ああ、生で観たい。

06. Summer Sun/Yo La Tengo
ロックでジャズでアンビエント。雑多な音楽を詰め込んだだけの “ゴッタ煮もどき” とは次元の異なるボーダーレスな世界に耳が眩む。静かな高揚感が延々と持続するこの独特のグルーヴ感覚はクセになること必至。

07. 777/クレイジーケンバンド
音楽好きの少年たちはオジサンになってもバンド活動を続けましたとさ。影響を受けた音楽たちをきっちりと吸収し、リスペクトも怠ることなくCKB仕様に仕上げるしたたかさ。色物キャラの陰に見え隠れする磐石の音楽的素養が心憎い。なにより本人たちが楽しそうなのがイイね。


  

08. Want One/Rufus Wainwright
「天才」という形容詞も素直に受け入れたくなる傑作。曲,音,アレンジ,構成、すべてが緻密に計算されていながら、音のベクトルがしっかりと外を向いているのが素晴らしい。#3「ヴィシャス・ワールド」は2003年に聴いた最も美しいバラード。

09. You Gotta Go There to Come Back/Stereophonics
路線もこれまでの延長線上だし、特に新しいことにチャレンジしているわけでもない。多分このアルバムは、音楽シーンにとっても本人たちのキャリアにとっても、たいして重要な作品ではないのだろう。…と頭ではそう思うんだけど、ふと気がつけばすっかりヘヴィ・ローテイションに! だってイイ曲書くもんな。それだけ下地がしっかりしてるってことですね。

10. Demolition/Ryan Adams
実は2002年のリリースだけど、長きにわたって愛聴しました。もともとデモ・トラック&ボツ・テイク集という企画物だけに、曲もアレンジも極めてシンプルかつストレート。普段から変化球やチェンジ・アップばかり聴いていると、たまに来る直球ド真ん中にキリキリ舞いしてしまう。新作 『Rock N Roll』 も現在猛烈聴き込み中。



ジャズでは、ジョン・ゾーン・マサダ結成10周年記念の3タイトルや、復活のアート・アンサンブル・オブ・シカゴ関連、安心品質のカサンドラ・ウイルソン,ワダダ・レオ・スミスあたりを愛聴。藤井郷子の怒涛のリリース・ラッシュも迫力でしたね。10選からは外れたけど、ソウル/R&B関係ではメイシー・グレイ,メアリー・J・ブライジ,エリカ・バドゥといった有名どころの底力感服しました。聴いた瞬間に「年間ベスト当確!」と確信したジェーンズ・アディクションやロバート・ランドルフのスタジオ録音盤は聴き込むほどに熱が冷め、逆にライアン・アダムズやステレオフォニックスのような、正直言って “軽く” 見ていた連中が愛聴盤になる。音楽ってのは聴いてみんことにゃワカランもんだねえ。02年に車通勤になって以来、音楽のほとんどを車の中で聴いているので、どうしてもジャズ勢(特に即興演奏系)は分が悪い。確かに運転しながらジョン・ゾーンを聴いても、心からは楽しめないんだよなあ。2004年もロックに傾倒しそうな予感。

投稿者 nill : 02:49 | コメント (0) | トラックバック

2003年12月31日

年間ベスト・ミステリ 2003

○関連記事: 年間ベスト 棚卸

2003年に読んだミステリ ベスト5を選出するのはとても楽だった。読書量が貧弱だったので四の五の言ってる余裕がないのだな。


   

  


01. 終戦のローレライ/福井晴敏
なんのヒネリもなく、ローレライが1位。二段組上下巻の隅々まで行き渡る著者の情熱に圧倒されながら読む一遍。冒険小説不遇の時代によくぞここまで書き上げてくれました。ここでの潜水艦バトルは、文字通り「前代未聞」だと思う。映画化の方はハッキリ言って期待していないけれど、でもやっぱり観てみたい。

02. 亡国のイージス/福井晴敏
そうなんだ、ぼくは 『イージス』 も03年になってから読んだのだった。 『イージス』 と 『ローレライ』 については自分の中で甲乙ついてないけれど、 “ 『亡国のイージス』 という傑作の次” という大きな壁を乗り越えた、という一点で 『ローレライ』 を1位にした。でも破格の面白さはどちらも折り紙付きですね。

03. モンスター・ドライヴイン/ジョー・R・ランズデール
B級もの、バカミス系をハズしまくった03年。その中で唯一異彩を放ったのがランズデールのこのハチャメチャ青春SFホラーコメディ。いつものようにドライヴイン・シアターにたむろしてB級映画と共に夜を明かす主人公たち。そこに突然空から彗星が降ってくる! そこから先はもう理屈もへったくれもない混沌の世界へ…。脳が踊る。

04. 黒と青/イアン・ランキン
チャンドラーの流れを汲む正統派ハードボイルドのマナーを踏襲しつつ、“俺が掟だ”系のエッセンスを絡めることにも成功したランキンの <リーバス警部> シリーズ代表作。プロットも相当しっかりと練られていて読み応え充分。デニス・レヘイン,マイクル・コナリー,イアン・ランキン…ぼくにとってはこの三人が現代ハードボイルドの最重要トリオ。

05. 暗闇にひと突き/ローレンス・ブロック
10年,15年前に読んで面白いと思った作品は、はたして今読むとどうなの? というのはよく思うこと。 03年は個人的に「馴染み深いシリーズ物の再読」というテーマに取り組んでいたので、その中から一冊。ブロックの <マット・スカダー> は最も愛着のあるシリーズのひとつ。この作品を読んだ当時はさほど面白いと思った記憶はないが、読み返してみると、シリーズ代表作の一つである次作 『八百万の死にざま』 に至る伏線がギッシリと詰まっており、非常に興味深い。この「再読」には2004年も引き続き取り組んでいく予定。なんといっても金がかからないのがイイ!


以上5作品。われながら何の意外性もないな。
でも2004年もやっぱりハードボイルドで行くぞ! と心に決めている。


※この記事は、ミステリ小説を無責任に読む集まり(コミュニティ)「このミステリーはすごい?」(現在はmixiで活動中)に投稿した記事を転載したものです

投稿者 nill : 01:54 | コメント (0) | トラックバック

2002年12月31日

年間ベスト・ミステリ 2002

○関連記事: 年間ベスト 棚卸

02年に“読んだ”ミステリの中から5作選出。約20年にわたって海外翻訳ミステリひと筋の偏食家だった私がはじめて国内ミステリに触れた年。すべてはネットで知り合った仲間たちのおかげ。引きこもっていても世界は広がるのだ。


    


01. 闇よ、我が手を取りたまえ/デニス・レヘイン
02. 愛しき者はすべて去りゆく/デニス・レヘイン
つまるところ2002年の海外ミステリはデニス・レヘインだった。暗く深い闇の世界で交錯するセンチメンタリズムが堪らない傑作2冊。正統派ハードボイルドも少しずつ姿を消し行く昨今、レヘインには是非頑張って欲しい。

03. ハサミ男/殊能将之
なんといっても2002年は個人的な国内ミステリ元年。記念すべき年なのである。中でも“日本人、侮り難し”と思わされた一冊。巧みな仕掛けに惑わされたものの、二度読んでもしっかり読ませる良作でした。

04. 時計館の殺人/綾辻行人
“新本格”と呼ばれる分野には決して好意的ではない私。読めば図らずもアラばかりを探してしまうネガティヴな読み手であります。しかし、この作品には唸った。新味こそ感じなかったけど、「本格推理はかくあるべし」という私の欲求をほぼ完璧に満たしてくれた。

05. 殺し屋/ローレンス・ブロック
5位は迷った。イアン・ランキンも捨て難いし、馳星周もなかなかのもの。が、迷った挙句選んだのは、ブロックの新シリーズ<殺し屋ケラー>の初陣を飾る連作短編集。この何とも表現し難い新鮮さ。まだ引き出しがあったのか、ブロック。う~む、ファンです。


※この記事は、ミステリ小説を無責任に読む集まり(コミュニティ)「このミステリーはすごい?」(現在はmixiで活動中)に投稿した記事を一部加筆・修正して転載したものです

投稿者 nill : 23:34 | コメント (0) | トラックバック

年間ベスト・アルバム 2002

○関連記事: 年間ベスト 棚卸

02年、振り返ってみれば、…そうだった、転職したんだった。その結果、「片道20分の電車通勤」から「片道1時間半の車通勤」へ。まあ確かに遠い。ずいぶん遠くなった。が、「一人でじっくりと音楽に浸る時間毎日3時間確保」とも言える。たとえば自宅で3時間集中して音楽を聴くことができるだろうか。私には無理。絶対寝る。嫁に煙たがられる。子供がダイヴしてくる。嗚呼、なんと貴重な3時間。

ただ、“車で聴く音楽”には向き不向きが確かにある。即興ジャズや音響系は鳴りを潜め、ロックや日本のアーティストが幅を利かせる。そんな年だった(と記憶している)。

※選盤は2002年末当時ですが、コメントは2005年1月現在のものです。


 


01. The Word featuring John Medeski, The North Mississippi Allstars, Robert Randolph

当時の私の耳はすでにジョン・メデスキーに支配されていたので、クレジットの片隅にでも「John Medeski」の文字があれば即買いの単なるカモだったわけですが、それにしてもこの作品は“車で聴く”というシチュエイションに見事にハマってくれた。メデスキーとザ・ノース・ミシシッピ・オールスターズの面々が若僧 ロバート・ランドルフ(ペダル・スティール)をフロントに立てて吹き込んだ企画盤。「インストゥルメンタルのゴルペル・アルバム」が作りたかったそうな。コンセプトが明快なので音楽も明快。転職してよかった、と思わせた一枚。

国内盤(写真左)のジャケットがけっこう好きで、自分のサイトの色合いを茶系にしたのはその影響だったりします。


  


  


  

02. Free So Free/J Mascis + The Fog
03. Have You Fed The Fish?/Badly Drawn Boy
04. THE WORLD IS MINE/くるり
05. About A Boy/Badly Drawn Boy
06. Diving into your mind/畠山美由紀
07. V/United Future Organization
08. E/奥田民生
09. ハイヌミカゼ/元ちとせ
10. ROCK AND ROLL HERO/桑田佳祐


ヘタクソな歌に合わせてドでかい音でギターをかき鳴らす気だるい物腰のロン毛のオッサン、J・マスシスは私のギター・ヒーローなので順当にランク・イン。とかく「轟音」という大雑把なキーワードで語られがちだけど、実は幾千もの音色を自在に操る職人さんなのだと思う。それにしてもダイナソーJr解散後のJは本当に溌剌としているな。国内盤ボーナス・トラックのライヴ音源「Alone」の歪み具合も凄い。

バッドリー・ドローン・ボーイことデイモン・ゴフは160km台の剛速球を持ちながら、役にも立たない魔球ばかりを練習している男だ。名人級の作曲能力を80年代 MTV全盛期の産業ロック臭ただようメッキのような華やかさで粉飾。仕上がった音はとことん胡散臭くて紛い物っぽい。が、それこそが最大の魅力。『Have You Fed The Fish?』はその胡散臭さ全開の快作。一方、『About A Boy』は同名映画のサントラ盤という性格上、遊び心は控えめな代わりに楽曲の美しさが際立つ佳作になった。

くるり奥田民生は「同世代」であることを強烈に意識させるアーティスト。常に注目。「静かの海」の音圧にのけぞって、テクノ仕様の「WORLD'S END SUPERNOVA」~「BUTTERSAND/PIANORGAN」に唸り、「水中モーター」の開放的なリフレインでご昇天。やっぱりくるりはこれくらいとっ散らかっていた方が面白い。奥田民生の場合は「custom」~「ヘヘヘイ」~「The STANDARD」と既発曲でたたみかける終盤が迫力。普通はこれだけ既発曲が続くと損した気分になるけどな。

Port Of NotesDouble Famousでの畠山美由紀もじわじわとキてたわけですが、ソロ・デビュー作にして「ついにやられた」という感じ。耳心地の良い英詞もいいけど、これが日本語詞になると突如として情念の炎が浮き彫りになって襲いかかって来るようで怖い(笑)。で、もちろん怖い女はクセになる。

天性の魂(ソウル)は無くともセンスは抜群の日本人×2,外人さん×1の良質DJユニット、UFO。もっと注目されてもいい人たちだと思うけど、息長くマイ・ペースでがんばってくれているので良しとしよう。本作は前半を徹底的にアンビエントにキメるという作戦に出た。地味だけどやっぱり良い作品。

元ちとせを聴いたのは「ワダツミの木」がそろそろチャートを下ろうとしていた頃か。まさに“時の人”であり一発屋の匂いも濃厚だったわけで、「こぶし」を芸にしたあざとい作品だったらやだなー、と危惧していたのですが、予想を裏切る充実した内容に拍手でした。もう「ワダツミの木」のようにバカ売れすることはないだろうけど、そもそもあんな売れ方が間違いなので、ここはひとつ地道な頑張りを期待したいところ。

車通勤となると当然「渋滞」があるわけで、そんな時は一緒に口ずさむことができる曲が最高です。とくれば私の場合はこの人、桑田佳祐。近年は過去のフレーズの再利用であだち充のようになっているとはいえ、まだ死んだわけじゃないことを実証した力作。こいつを聴くと「サザン」という活動母体が足枷にしか思えないのだが、いかがなものだろうか。


と、ひと通りはいいことばかり書いてみたものの、今じゃ全然聴かないのも結構あるな。全体的に日本の作品が多いのはやはり「車で聴く」ことと大きく関係していると思われる。鼻歌は気分いいし。カラオケの練習にもなるし。やっぱり車通勤にジョン・ゾーンはまずいでしょ。

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