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2002年12月31日

年間ベスト・アルバム 2002

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02年、振り返ってみれば、…そうだった、転職したんだった。その結果、「片道20分の電車通勤」から「片道1時間半の車通勤」へ。まあ確かに遠い。ずいぶん遠くなった。が、「一人でじっくりと音楽に浸る時間毎日3時間確保」とも言える。たとえば自宅で3時間集中して音楽を聴くことができるだろうか。私には無理。絶対寝る。嫁に煙たがられる。子供がダイヴしてくる。嗚呼、なんと貴重な3時間。

ただ、“車で聴く音楽”には向き不向きが確かにある。即興ジャズや音響系は鳴りを潜め、ロックや日本のアーティストが幅を利かせる。そんな年だった(と記憶している)。

※選盤は2002年末当時ですが、コメントは2005年1月現在のものです。


 


01. The Word featuring John Medeski, The North Mississippi Allstars, Robert Randolph

当時の私の耳はすでにジョン・メデスキーに支配されていたので、クレジットの片隅にでも「John Medeski」の文字があれば即買いの単なるカモだったわけですが、それにしてもこの作品は“車で聴く”というシチュエイションに見事にハマってくれた。メデスキーとザ・ノース・ミシシッピ・オールスターズの面々が若僧 ロバート・ランドルフ(ペダル・スティール)をフロントに立てて吹き込んだ企画盤。「インストゥルメンタルのゴルペル・アルバム」が作りたかったそうな。コンセプトが明快なので音楽も明快。転職してよかった、と思わせた一枚。

国内盤(写真左)のジャケットがけっこう好きで、自分のサイトの色合いを茶系にしたのはその影響だったりします。


  


  


  

02. Free So Free/J Mascis + The Fog
03. Have You Fed The Fish?/Badly Drawn Boy
04. THE WORLD IS MINE/くるり
05. About A Boy/Badly Drawn Boy
06. Diving into your mind/畠山美由紀
07. V/United Future Organization
08. E/奥田民生
09. ハイヌミカゼ/元ちとせ
10. ROCK AND ROLL HERO/桑田佳祐


ヘタクソな歌に合わせてドでかい音でギターをかき鳴らす気だるい物腰のロン毛のオッサン、J・マスシスは私のギター・ヒーローなので順当にランク・イン。とかく「轟音」という大雑把なキーワードで語られがちだけど、実は幾千もの音色を自在に操る職人さんなのだと思う。それにしてもダイナソーJr解散後のJは本当に溌剌としているな。国内盤ボーナス・トラックのライヴ音源「Alone」の歪み具合も凄い。

バッドリー・ドローン・ボーイことデイモン・ゴフは160km台の剛速球を持ちながら、役にも立たない魔球ばかりを練習している男だ。名人級の作曲能力を80年代 MTV全盛期の産業ロック臭ただようメッキのような華やかさで粉飾。仕上がった音はとことん胡散臭くて紛い物っぽい。が、それこそが最大の魅力。『Have You Fed The Fish?』はその胡散臭さ全開の快作。一方、『About A Boy』は同名映画のサントラ盤という性格上、遊び心は控えめな代わりに楽曲の美しさが際立つ佳作になった。

くるり奥田民生は「同世代」であることを強烈に意識させるアーティスト。常に注目。「静かの海」の音圧にのけぞって、テクノ仕様の「WORLD'S END SUPERNOVA」~「BUTTERSAND/PIANORGAN」に唸り、「水中モーター」の開放的なリフレインでご昇天。やっぱりくるりはこれくらいとっ散らかっていた方が面白い。奥田民生の場合は「custom」~「ヘヘヘイ」~「The STANDARD」と既発曲でたたみかける終盤が迫力。普通はこれだけ既発曲が続くと損した気分になるけどな。

Port Of NotesDouble Famousでの畠山美由紀もじわじわとキてたわけですが、ソロ・デビュー作にして「ついにやられた」という感じ。耳心地の良い英詞もいいけど、これが日本語詞になると突如として情念の炎が浮き彫りになって襲いかかって来るようで怖い(笑)。で、もちろん怖い女はクセになる。

天性の魂(ソウル)は無くともセンスは抜群の日本人×2,外人さん×1の良質DJユニット、UFO。もっと注目されてもいい人たちだと思うけど、息長くマイ・ペースでがんばってくれているので良しとしよう。本作は前半を徹底的にアンビエントにキメるという作戦に出た。地味だけどやっぱり良い作品。

元ちとせを聴いたのは「ワダツミの木」がそろそろチャートを下ろうとしていた頃か。まさに“時の人”であり一発屋の匂いも濃厚だったわけで、「こぶし」を芸にしたあざとい作品だったらやだなー、と危惧していたのですが、予想を裏切る充実した内容に拍手でした。もう「ワダツミの木」のようにバカ売れすることはないだろうけど、そもそもあんな売れ方が間違いなので、ここはひとつ地道な頑張りを期待したいところ。

車通勤となると当然「渋滞」があるわけで、そんな時は一緒に口ずさむことができる曲が最高です。とくれば私の場合はこの人、桑田佳祐。近年は過去のフレーズの再利用であだち充のようになっているとはいえ、まだ死んだわけじゃないことを実証した力作。こいつを聴くと「サザン」という活動母体が足枷にしか思えないのだが、いかがなものだろうか。


と、ひと通りはいいことばかり書いてみたものの、今じゃ全然聴かないのも結構あるな。全体的に日本の作品が多いのはやはり「車で聴く」ことと大きく関係していると思われる。鼻歌は気分いいし。カラオケの練習にもなるし。やっぱり車通勤にジョン・ゾーンはまずいでしょ。

投稿者 nill : 2002年12月31日 01:01

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