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2004年12月19日

年間ベスト・ミステリ 2004

ミステリ小説、2004年の私的ベスト5。ただし選定対象は、“2004年に読んだ”ミステリであって、“2004年に出版された”ものではないことを予めお断りしておきます。


    


1. ファイナル・カントリー/ジェイムズ・クラムリー [ハヤカワ・ノヴェルズ]
チャンドラーを別格として据え置けば、クラムリーこそが当代随一のハードボイルド作家であり、極端に寡作だけど打率9割9部9厘のぼくのアイドルである。もはや「お爺ちゃん」の領域に踏み込みつつある主人公ミロは、酒に女にクスリにと相変わらず破天荒極まりない。誇り高き男などでは決してなく、最後の一線を踏み越えていないだけのただのロクデナシだ。でもその土俵際のふんばりが胸に沁みるのだ。芳醇なハードボイルドのエキスがしたたり落ちる快作。クラムリーを未読の人に「この作品を読め!」とは言いません。「クラムリーは、全部、読め !!」

2. ボストン、沈黙の街/ウィリアム・ランディ [ハヤカワ・ミステリ文庫]
一昨年高評価だった作品。『ボストン、沈黙の街』というそそられない邦題のおかげで手を出すのが遅れたが、これはとんでもなく面白かった。流れるような展開と効果的な挿話にただならぬ“技巧”の匂い。善にも悪にも転び得る人物造形もお見事。これがデビュー作だってさ。おそるべし。次作に期待が高まる。

3. 心の砕ける音/トマス・H・クック [文春文庫]
なんとなく縁がなかったクックに初挑戦。きっかけは状態の良い本書がBOOK-OFFにて100円で手に入ったから。全編に漂う“暗さ”には好みが別れそうだけど、ぼくはとにかく美文に酔った。翻訳というフィルターを通してなお香り立つ才気。これが100円とは、なんだか申し訳ない。

4. 推定無罪/スコット・トゥロー [文春文庫]
わが家の本棚に鎮座すること10余年。積読の象徴だった本書を読み上げたことは2004年の小さな小さな個人的トピックなのです。法曹界を舞台に展開される灰色の人間模様。10年寝かせた甲斐があった濃厚な物語。傑作、だと思います。

5. ワイオミングの惨劇/トレヴェニアン [新潮文庫]
すっかり死んだとばかり思っていた寡作の覆面作家の驚きの新作。『シブミ』や『夢果つる街』といった過去の名作に比肩し得る作品、とは思わないけど、トレヴェニアン節は充分に堪能できる。特に長すぎるエピローグがツボ。


以上、全員外人。国内物を読んでいなかったわけじゃないけど、今年はインパクトに欠けました。そして例年と同じく、「来年はもっとたくさん読もう」と心に誓ってしめくくり。

※この記事は「mixi」のコミュニティ「このミステリーはすごい?」に投稿した記事を転載したものです

投稿者 nill : 2004年12月19日 04:41

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