2005年04月28日

タヒチ80のパズル (57点)

Tahiti 80 - Puzzle [2000]
Producer: Andy Chase
Label: Minty Fresh
Catalog#: 70036

本国フランスでも日本でも大ヒットしたはずのタヒチ80、デビュー作。「タヒチ80」とカタカナで書くとやたらとダサいな(笑)。一聴して思わずマット・ビアンコのような聴き流し系お洒落ポップスと同類に括ってしまいそうになったけど、そこまで商業寄りにされては洒落にならないと思ったか思わずか、さりげないライヴ感覚のようなものも残している。(単純に「音が粗い」とも言う。)

プロデュースはアイヴィアンディ・チェイス、ゲストにはファウンテインズ・オブ・ウェインアダム・シュルシンガー(ピアノ,オルガンで参加)の名前などもあり、思いっきりアメリカンだ。とくれば当然ファウンテインズ・オブ・ウェインが比較対象にされたりもするわけだが、さすがにそれは酷というもの。少なくともこの時点では“ポップさ”の格が違いすぎる。

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2005年04月26日

ステレオフォニックスのいつまでもガキじゃねんだから (52点)

Stereophonics - Just Enough Education To Perform [2001]
Producer: Bird & Bush
Label: V2
Catalog#: 27092

前にも書いたが、誰も憶えている筈はないのでもう一度書くが、ケリー・ジョーンズ(vo,g)のヴォーカルはリアム・ギャラガー(オアシスのvo)の出来損ないだと思う。芝居がかったしゃがれ声がどうにも馴染まない。ついでにひしゃげたギターの音も暑苦しい。本作は前2作よりも腰の据わった完成度の高い秀作で、だからこそ余計に暑苦しさが倍増してしまうのだ。極めて私的かつ生理的な反応ではあるけれど、そうなんだからしょうがない。

しかし、なんだかんだと文句を言いながらも時々聴いてしまうのがステレオフォニックス。音楽センスに長けているのは間違いない。ひさしぶりに聴いてみっか、という気にさせる。ドラムが交代した最新作 『Language. Sex. Violence. Other?』 は未聴だが、やっぱり一応聴いておくか、という気になっている。

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2005年04月21日

モグワイの幸福な人々の幸福な歌 (65点)

Mogwai - Happy Songs For Happy People [2003]
 Producer: Tony Doogan
 Label: Matador
 Catalog#: 10567

音にヴァリエイションがあるわけでもなく、静寂と轟音のコントラストで聴かせる曲の展開はほぼ完全にパターン化されており、ジャンル越境の異種交配があるわけでもなく、バカテクというわけでもない。モグワイの偉大さは、既出の形式や方法論をちょっと違った組み立て方をすることで全く独自のスタイルを確立し、しかもそれを継続していることにある。もうこれで4枚目だってさ。すぐにネタ切れになると踏んでいたので正直驚いた。

スチュアート・ブレイスウェイト(ギター,キーボード,パーカッションなど)によれば、この作品はこれまでのような余計なプレッシャーを感じることなく純粋に音楽を演奏することを楽しみながら吹き込んだそうである。おかげでハッピーづくしのアルバム・タイトルになるわけだが、だからといってそのハッピーさが音に反映されているかといえばそんなわけはなく、充分に暗くて退廃的だ。そこがいいんだ。あまりハッピーになり過ぎないことを切に願う。

「Live Music Archive」に転がっているライヴ音源も聴いてみた。基本的には原曲をちょっと発展させた程度の演奏だが、しっかりとオリジナルな空間を創り出している。生で体験してみるのもいいかもしれない。

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2005年04月18日

イアン・ブラウンの未完のインチキ (41点)

Ian Brown - Unfinished Monkey Business [1997]
Producer: Ian Brown
Label: Polydor
Catalog#: 539565

ストーン・ローゼズ空中分解後のソロ1作目。歌は上手けりゃいいってもんじゃない。技術的な側面だけでヴォーカリストの質が判断されてしまうなら、ジミ・ヘンドリクスニール・ヤングトム・ウェイツもプロ失格だ。世の中には「好きにならずにいられない」ものが確実に存在する。

でもイアン・ブラウンはただのヘタクソだと思う。末期ストーン・ローゼズで脱退したジョン・スクワイア(g)の代役としてステージをこなしたアジズ・イブラヒムはここでも頑張っている。アジズのギターがフィーチャされたインスト曲 #9「What Happened To Ya Part 2」 が本作のベスト・トラックだ。

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イールズの電気ショック・ブルーズ (51点)

Eels - Electro-Shock Blues [1998]
Producers: E., Jim Jacobsen, Mickey P., Michael Simpson, The Good, The Bad and The Ugly
Label: Dreamworks
Catalog#: 50052

E」と名乗る男、マーク・オリヴァー・エヴェレットイールズの中心人物、というよりはイールズそのものである。作曲も作詞も編曲もプロデュースも歌もギターもベースもキーボードも自分でこなす。この作品のリリース当時、父親はすでに他界し、母親は末期癌、ヤク中の姉は自殺した。そんな状況の中、「生と死」という重く深いテーマに取り組んだのが本作、ということになっている。本人がそう言っているし、曲名に出てくる単語だけを抜き出しても、「Funeral(葬式)」,「Cancer(癌)」,「Hospital Food(病院食)」など、あからさまである。「死」にまつわるエピソードは良い商売になるので、この作品がメディアで取り上げられる時には当然のごとく「自殺した姉」や「癌の母親」がセットになっている。そんな予備知識をたっぷり仕入れてから E が書いた詞を読んでみると、なるほど考えさせられるフレーズが随所に登場して唸らされることしきり。しかし、私にはそれが重苦しくてしかたない。

そもそも言葉に重きを置きすぎている音楽は嫌いなのだが、この作品に付いてまわる「死」の匂いは、まるで聴き方を強要されているようでたいへん居心地が悪い。実際に曲を聴いてみればわかるが、E はポップ職人並みに器用な男で、楽曲のクウォリティはすこぶる高い。“死ぬ前に最後に立ち寄る街”を歌った#10「Last Stop: This Town」の完成度などはさすがのもの。

そんなに嫌なら余計な情報は無視すれば良いだけの話なのだが、駄目なんだ、洗脳されやすい性質だから。

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2005年04月17日

ブルーズ・エクスプロージョンのダメージ (67点)

「あんまり聴いていないロック・アルバム」のプレイリストをエントリしてから実に一ヶ月弱が経過してしまった今ではもちろんとっくに全然違うものを聴いているわけだが、自分に課した義務としてきっちりレヴューは書きますとも。ちなみにその一ヶ月弱もの間に何をしていたかというと、育児に専念していました。

Blues Explosion - Damage [2004]

ジョン・スペンサーは普通にブルーズ・ロックをやっていれば充分カッコイイと思うのだが、何かちょっとしたコンセプトのようなものを掲げないと燃えない体質なのかもしれない。96年の傑作 『Now I Got Worry』 でひとつの頂点を極めてしまった後も、名うてのプロデューサーやサウンド・クリエイターらに自分たちの作った音を素材として提供してその調理技術を競わせた 『Acme』 (98年)、まともすぎて意外だった直球勝負のロックン・ロール・アルバム 『Plastic Fang』 (02年) 、さて次はどんな手で来るかと思いきや、なんとバンド名を変えちまいやがった。

変えたといっても「ザ・ジョン・スペンサー・ブルーズ・エクスプロージョン」から固有名詞を削除して「ブルーズ・エクスプロージョン」になっただけで、音楽サイト「VIBE」に掲載されたインタヴューによれば、

「USとかヨーロッパでは、以前からブルース・エクスプロージョンって呼び名が一般的なんだ。だから、新作を出すのを機に変えただけで、これといった理由はないんだけどね。」

とのことらしいが、個人的な好みを言えば、なんだか地味になってしまったようで大いに不満である。「ジョン・スペンサー&ザ・ブルーズ・エクスプロージョン」ではないところがいたく気に入っていたのだが…。

さて、音に関してはこれまでに体得してきたスタイルを組み合わせた構成で、コレといった新味はない。が、それでも凡百のロック・バンドごときではとても太刀打ちできないレヴェルにすでに到達しているので心配は不要。ダレすぎずイキすぎずのラッセル・シミンズのドラミングは安心のブランドに近づきつつある。 #2「Burn It Off」 のようなシンプルなロックン・ロールができるようになったことも大きい。話題のDJ シャドウとのコラボ曲 #10「Fed Up and Low Down」 は期待にたがわずアルバム中もっとも破壊的な出来映えで、名実ともにハイライト・ナンバーになった。

太く短く、パッと咲いて美しく散る、というのも悪くないが、そのタイミングはすでに逃してしまっているので、こうなったらあとは“円熟”するしかない。期待してます。マジで。 試聴する Amazonで買う

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2005年03月27日

Asian Dub Foundation - Community Music

音楽教育センターで知り合ったUKエイジアン達によるダブ・ユニットは、ロック,ヒップ・ホップ,ラガ,ドラムンベースなどの雑多な要素をゴッタ煮しながらも煮込むまでには至らず、全編にみなぎる青々しいパワーもレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのように聴き手をのけぞらせるほどの青さではなく、そのくせ収録時間が長すぎる。先頃リリースされた新作ではメンバーも入れ替わって多少印象が違うらしいが、すでに触手は伸びず。2000年作品。46点。

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2005年03月24日

ザ・レイヴのMedeski Martin & Wood

ビリー・マーティン(ds)とクリス・ウッド(b)、この2人が叩き出すリズムはホント粘り強い。無限を感じる。グルーヴの持久走大会(正しくは持久グルーヴ大会)でもあれば、このコンビはかなりイイ線いくんじゃないだろうか。練って練って積み上げて編み込んで創り出すグルーヴの大海原。さあジョン、あとは好き勝手に暴れちゃってください。…はァ、極楽じゃ。

このツアーでの定番曲となったPJ Harveyの「The Letter」や「Who The Fuck?」はもはやMMWがオリジナルのような気さえしてきた。何故PJ Harveyなのか、が気になるところではあるけど、どっちも好きなので深く考えずに拍手する。BitTorrent音源なので採点はなし。写真は「concertlivewire.com」より拝借。


Medeski, Martin, & Wood
2004-11-13
The Rave
Milwaukee, WI
http://bt.etree.org/details.php?id=9289

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2005年03月23日

バワリー・ボールルームのThe Word

North Mississippi Allstars, ジョン・メデスキー(key), そしてロバート・ランドルフ(pedal steel)によるセイクレッド・スティール・プロジェクト、The Wordのライヴ音源。ちなみに「セイクレッド・スティール(Sacred Steel)」とは『ラップ・スティール・ギターあるいはペダル・スティール・ギターを中心とした編成の、主にインストゥルメンタルのゴスペル・ミュージック』である、とピーター・バラカン氏が「音・粋・人」の『「GUITAR POWER」にFitする3枚 VOL.2』で解説されています。

で、大好きなThe Wordの期待のライヴなわけですが、全体的にお行儀がよろしくてどうにここうにもぶっ飛べない。まあメデスキーは「サポート役に徹している」と解釈するとして、ランドルフはもっとエゴ丸出しで突っ走って欲しかった。若手だし、主役だし。2001年6月ということはスタジオ盤がリリースされる前か同時期かという頃。ランドルフも芸達者な先輩方が相手でちょっと萎縮したか。BitTorrent音源なので採点はなし。写真は「JamBase」より拝借。


The Word
John Medeski, Cody Dickinson, Luther Dickinson, Chris Chew and Robert Randolph
Bowery Ballroom - NYC
June 27, 2001
http://bt.etree.org/details.php?id=10929

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2005年03月18日

不真面目なプロの真面目なお遊び

T.J. Kirk - Talking Only Makes It Worse [2004]

90年代にサンフランシスコで結成・活動し、2枚のアルバムを残したT.J. Kirkは、3人のギタリスト(ビル・バーナード, ジョン・スコット, チャーリー・ハンター)と1人のドラマー(スコット・アメンドラ)という変則的な編成で、セロニアス・モンク(T), ジェイムズ・ブラウン(J), ローランド・カーク(Kirk)の曲だけを演奏するという企画モノ的なポリシーを掲げた風変わりなバンドである。まあハンターの場合はやることなすこと変則的なので今さら驚くにはあたらない。その後は音沙汰がなかったわけですが、もともと“企画モノ”だし、ハンターも活動拠点をニューヨークに移したことだし、おそらく誰も不思議には思わなかったことでしょう。

そんな彼らが03年に思いついたように2日間だけライヴをやってしまいました。もちろんサンフランシスコで。その記録がコレ。作品としては04年リリース。

そもそもの方向性自体が安直なんだか奇天烈なんだかよくワカランが、こういう一見バカバカしい余興も凄い人たちがやるとやっぱり凄いことになるのだ。精力的なリリースに余念のない最近のハンター作品の中でもいちばん好きかも。誰のカヴァーをやっても、この面子ならではと思える異形のファンクネスが体感できます。ZeppelinVan Halenまで登場するご愛嬌ハード・ロック大会も笑えるし。78点。 試聴する Amazonで予約 ※Amazonでは4/5にやっと発売だそうで

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2005年03月14日

Timbaland & Magoo - Under Construction Part II

ヒップ・ホップの持つ“ストリート感覚”というのがどうにも理解できない、というか全く共感が持てないので、エロ話も政治ネタもゲットー自慢もどうでもよくて、音の切り貼り、コラージュ感覚が優れているかどうかが最大の関心事になる。

その点、ティンバランドはかなり聴ける。変態でヘンテコなビートをヒップ・ホップに持ち込んだ功績も大きい。でもこの作品はかなりフツーですね。普通に良い作品ではあるけど異端の匂いは控えめ。キワモノ好きには物足りない。#5「That Shit Ain't Gonna Work」の醒めたループがなかなかソソる。03年作品。58点。 試聴する Amazonで買う

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2005年03月13日

The Dirty Dozen Brass Band - We Got Robbed! -Live In New Orleans-

先ごろ来日公演も行われたDDBBの地元ニューオリンズでのライヴ音源。03年作品。ライヴには行けなかった。行けた人、羨ましい。

作品のレヴューは以前に「労働の後にビール片手に聴きたい音楽No.1─The Dirty Dozen Brass Band」としてエントリ済みなので割愛。繰り返し聴きすぎてさすがにちょっ飽きが来たけど、楽しい作品であることには変わりはない。管楽器の獰猛なアンサンブルが“適度にアバウト”なところが体にしっくりと馴染む。71点。 Amazonで買う

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2005年03月12日

Master Musicians Of Jajouka featuring Bachir Attar (Produced by Talvin Singh)

イースト・ロンドン育ち、インド系2世のタルヴィン・シンは、タブラ奏者でもあり、インドの伝統音楽と近代のエレクトロニカの融合を試みるサウンド・クリエイターでもある。なんともエキゾチックなプロフィールではあるけれど、実はこの人の作る電子トラックは意外と普通。あまり突き抜けたものは感じない。ところがそこに狂気のタブラが加わると時としてトンデモない倒錯世界を創り出したりしてくれるので目が離せない存在ではある。

一方のMaster Musicians Of Jajoukaはその名のとおりジャジューカを演奏する音楽集団。ジャジューカはモロッコの伝統的な儀式音楽で、ライタ(日本人に馴染み深い呼び名だと「チャルメラ」),フルート,打楽器,手拍子などが同じフレーズを延々と繰り返す呪術的ループ・サウンズ。その音楽集団の頭目がバシール・アッタール。この人はジャジューカの啓蒙活動に熱心な人で、オフィシャル・サイトのディスコグラフィを覗いてみるとジャジューカと商業音楽との歩み寄りがよくわかる。

そんな両者の組み合わせ、さぞかし刺激的な音が期待できるわけですが、結果的には思ったほどの化学反応は起きなかった模様。良い曲もあるけど、それぞれが別々にがんばった、という感じ。#5「You Can Find The Feeling」のようなキャッチーな世界をもっとドロドロに発展させてくれると面白かったのに。妙な理性が働いたか。2000年作品。54点。 試聴する Amazonで買う

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2005年03月11日

Medeski Martin & Wood - End of the World Party (Just in Case)

この作品については 年間ベスト・アルバム 2004 の方に簡単なコメントを書いたので自分のレヴューは棚上げし、各種音楽系サイトやblogにエントリされている他の人のレヴューをいろいろと読み漁ってみた。

けっこう賛否両論ですね。「否」としている人の主な理由はだいたい以下の二つ。


  • 無理矢理わかりやすくして売れ線に走った(特に前半)

  • ライヴ・バンドとしての特長を活かしきれていない(特に前半)
要するに「はじけきれない」, 「期待してたのとなんか違う」というストレスがたまったのだな。確かに、エア・プレイに照準を合わせたように曲は短めだし即興は控えめだし、特に冒頭4曲に至ってはMMW流サウンドスケープのような滑らかな耳障り。納得できない理由もよくわかる。

が、ライヴと同じベクトルでテンションの高いアルバムを作る、というのはかなり安直な方法論じゃないですかね。「俺たちゃライヴが真骨頂、だからスタジオでも一発録りで」的なノリがどうも好きじゃない。「それはライヴでやりなよ」と言いたくなる。それをやらないのが『Shack-Man』(1996)以降のMMWで、しかも一作ごとに趣向を変えて、だからこそMMWのスタジオ盤は面白い、と思うのです。

そんなわけでこのアルバム、特に前半が好きだ。84点。 試聴する Amazonで買う

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2005年03月09日

Jamie Janover - Now, Center Of Time

ジャム・バンド系のセッション等にもよく顔を出しているハンマー・ダルシマー奏者 ジェイミー・ジェノーヴァーの独奏集。02年作品。

しれっと「ハンマー・ダルシマー奏者」などと書いてみたものの、「ハープのようなものをハンマーで叩いて音を出す楽器」程度の知識しか持ち合わせがありません。ジェノーヴァー以外のハンマー・ダルシマーは聴いたことがないし、この人の音や奏法が一般的なのか特殊なのか、凄いのかそれほどでもないのかイマイチ良くわかってない。でも弦をハンマーで叩く姿を想像しながらこの作品を聴いてみると、…やっぱり凄そうだぞ。 「ハンマー・ダルシマー」をA9で調べる

弦と弦の共鳴が奏でる甘美な響きと余韻を愉しむ、のも悪くないが、10代をヘヴィ・メタと共に過ごした私の肉体は強制的に早弾き(この場合は早叩き)に反応するようにできている。この正確無比な高速ストローク、いったい右腕左腕はどんな動きになっているのだろうか。映像が観てみたい。75点。 試聴する

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ISWHAT?! - You Figure It Out

フォーマットはヒップ・ホップだけど、聴こえてくるのは強烈に“ジャズ”です。ジャック・ウォーカー(sax, flute), ナポレオン・マドックス(MC, human beat-box), マシュウ・アンダーソン(bass)の三人組。04年作品。

聴いてるだけで唇が疲れるマドックスのヒューマン・ビートボックスや、名うての打楽器屋ハミッド・ドレイクの客演など、そこそこ話題はあるものの、圧倒的に音を支配しているのはアンダーソンのベース。こいつはぶっとくてかなりシビれます。うわついた装飾一切なしのハードボイルドな音作りで即興の匂いも漂う優れもの。かなりお薦め。70点。 試聴する Amazonで買う

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2004年10月09日

Verde Que Te Quero Rosa/Cartola

愛するマンゲイラブラジル・サンバ界の至宝 カルトーラ、1977年、69歳の時のアルバム『Verde Que Te Quero Rosa』より、冒頭一発目の表題曲(邦題「愛するマンゲイラ」)。

カルトーラ、本名アンジェノール・ヂ・オリヴェイラ。史上2番目のエスコーラ・ヂ・サンバ(「サンバの学校」の意。サンバ・チームのことを伝統的にそう呼ぶ)であるエスタサォン・プリメイラ・ヂ・マンゲイラの中心人物として活躍する。この時、弱冠20歳。しかし、やがて肥大化したマンゲイラとの間に確執が生まれ、カルトーラは音楽の表舞台から姿を消してしまう。時は過ぎ、1959年、映画『黒いオルフェ』にちょこっと出演したことをきっかけに、カルトーラは再びサンバの表舞台へ。そして1974年、ついにデビュー・アルバムをリリース。なんと66歳! その後は順調に音楽活動を展開し、マンゲイラとも和解して69歳にして作り上げたのが、この『Verde Que Te Quero Rosa』なのである。

とまあ、日本盤のライナー・ノーツやその他の資料から得たにわか知識をまとめるとこんな感じ。つまり私は全然サンバには詳しくないわけですが、要するに年季が違うということだ。ジャケット見てくださいよ。これはもう大好きなジャケットなのです。腹に一物ありそうな老獪な顔つきがめちゃくちゃイカします。ちなみにカルトーラが持っているカップの色(緑とピンク)はマンゲイラのチーム・カラーだとか。

ひと口にサンバと言っても、リオのカーニヴァル系ダンス・ミュージックからサウダージの代表格であるボサ・ノヴァまで、実に幅広いわけですが、「Verde Que Te Quero Rosa」のゆったりと落ち着いたテンポは個人的に最も身体に馴染みます。カルトーラの声にはコクがあり、録音も良い。ぼくにとっての極上リラクゼーション・ミュージック。おまけに曲の最後にはいわゆる腰振り笛吹きのカーニヴァル系サンバ・サウンドも顔を出し、サンバといえば「お嫁サンバ」と「マツケンサンバ」しか思い浮かばない、そんなアナタへの入門曲としてもオススメです。

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2004年09月03日

何と言う/奥田民生

Posted by nill

何と言うソロデビュー10周年記念第三弾シングルは、奥田作品ではすっかりお馴染みになったチャーリー・ドレイトンとのがちんこタッグ。まずギターの音がE。この粗っぽいけど分離度の高いギター・サウンドは、これまでの奥田作品にありそうで無かった音だと思うのだけど、どうでしょう。

「言葉」を巡る歌詞も、意味がなさそでありそで、浅そで深そで、、、OTワールド満開ですなぁ。。。

それにしても今回の3枚のシングルはどれも聴きやすいけれど、決してヒット・チャートを駆け上がるようなもんじゃない。ハナからそんなもの狙ってない。こういう作品を余裕しゃくしゃくでリリースできちゃうあたり、奥田民生はいいポジションにいるなぁ、と感じますね。マイペースを貫き続けてきた男に与えられた特等席。座り心地良さそうだ。

カップリングは「人ばっか」。過去の楽曲27曲をメドレーでお披露目するライブ音源。

古今東西、「メドレー」などという名を冠した楽曲にロクなものはない。一粒で二度も三度もおいしくしようと欲張ったがために、メリもハリも、くびれも出っ張りも無くなって、どっちらけな結果になっちまうのがお約束パターン。過去、ユニコーン時代のライヴでのメドレーもそんな感じだったので、ハッキリ言ってまったく期待していなかった。

が、これは、面白いです。

単なる数珠繋ぎではなく、キッチリと練られた構成が秀逸。次は何が飛び出すかとワクワクしてしまった。観客の反応も自然で、とても楽しそう。ひさしぶりに良いメドレーを聴かせてもらいました。

★★★★

さて、次はいよいよフル・アルバム。期待が高まります。CCCDだけど。

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2004年09月02日

カサンドラ・ウィルソン ─名古屋ブルーノート公演

Posted by nill

カサンドラ・ウィルソンのライヴ初体験。以前から一度は生で聴いてみたいと思っていたので、待望のライヴだったのであります。ところが…

会場の雰囲気に呑まれ、公演前に飲めもしないアルコール(ビール)をかきこんだおかげですっかり気持ち良くなってしまい、ライヴの半分くらいは寝てたとさ( !! )。もったいねー。ライヴ・レポート書く資格なし。

今回カサンドラをサポートするメンバーは、

 ブランドン・ロス(g)
 ジェフリー・ヘインズ(per)
 レジナルド・ヴィール(b)
 グレグワ・マレー(harmonica)
 テリ・リン・キャリントン(ds)

…WOW、素晴らしい。

カサンドラはもちろん、ブランドン・ロスとテリ・リン・キャリントンにも要注目。これを聴き逃すなど切腹モノ。寝るなんてもってのほか !!

名古屋ブルーノートはライヴ会場としてはとても理想的とは言い難い設計なのですが、肝心の音の方はまあまあ。ブランドン・ロスのギターの囁き音までしっかり聴こえました。私が座った位置からはキャリントンの姿はほとんど視界の外で、これはかなり残念。何がどう動いているのか判別不能な超絶スティック捌きを見るのはライヴの醍醐味のひとつなんだけどな。

金髪に染めたドレッドがまぶしいカサンドラの歌はというと、CDで聴く歌声とニアリ・イコール。完璧なる技術に裏打ちされた貫禄の歌声が、スタジオ録音とほぼ同等のクウォリティでもって数メートル先から聴こえてくる。気持ち良すぎです。

そう、寝てしまうくらい、気持ち良すぎだったのさ。。。 (涙

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2004年08月12日

奥田民生とマーク・リボーが夢の共演 !! していた

奥田民生ネタをもうひとつ。

実は今日初めて気付いたのですが、 『サウンド・オブ・ミュージック』 のギターってマーク・リボーだったんですね。ひェーッ、、、私のMostフェイヴァリットな二人がこんなところで共演していたとは !! クレジットはちゃんと読まにゃイカンなぁ。

で、あらためて耳の穴かっぽじってヘッドフォンで聴き直してみましたが……

わかんねェー

ある時は個性の塊のような音を発するくせに、ある時は完璧なるスタジオ・ミュージシャンと化すマーク・リボー。そんな謙虚なところも素敵です。

あと、本文とは関係ない、ですが、「NEW STANDARD」さんの記事「ロックンロールは 永遠のガキと 心得たり2」にTrackBackさせていただきました。奥田民生に関するコメント。いい文章です。

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2004年08月11日

『COVER GIRL』 つじあやの

COVER GIRLサザンの「シャ・ラ・ラ」を奥田民生とデュエットしてるということで少し前に話題になったつじあやの『COVER GIRL』 を聴きました。私のお目当てもご他聞にもれず奥田民生です。

けっこうかなり統一感のない選曲のカヴァー・アルバム。スタジオ録音「tokyo side」とライヴ録音「kyoto side」の2枚組。といっても1枚が短いのでヴォリューム的にはお手頃。

いままでつじあやのは聴いたことがなかったけど、ルックスからも明確に伝わってくるあのナチュラル素朴系のオーラが実は苦手です。オフィシャル・サイトのタイトルが「うららかさん」ですからね。おのれのキャラをちゃんと自覚してるわけね。

でも聴かず嫌いはもちろんよくありませんし、せっかく「奥田民生」というキッカケも頂いたことだし、曲はよく知ってるものばかりだし、個人的に 『窓に地球』 が未だヒット中のキセルとも縁深いようだし、ということで聴いてみたのいですが…
……み、、、見たまんまの音っすね。

「kyoto side」のウクレレ弾き語りライヴ録音は選曲的には面白いものの、ほのぼの感が前面に出すぎてちょっと居心地が悪い。ライヴといってもいわゆるコンサートを録音したものではなく、「COVER GIRL」スペシャルページ「kyoto side 豆知識」を見ればわかるように、完全なる企画モノです。企画のアイデア自体が “いかにも” なわけだけど、「豆知識」と合わせて聴くと多少親近感が増しますね。「プカプカ」の歌詞が持つ毒がいいアンマッチ感を演出しています。

「tokyo side」は普通に聴きやすいポップ・アルバムの体裁。奥田民生はやっぱり奥田民生な存在感バツグンで、アルバムの重要なアクセントになっている。偉大だ。

★★☆

ところで「COVER GIRL」スペシャルページには全ての曲について本人のコメントが読める「メッセージ from つじあやの」というコーナーがあるわけですが、面白いのは各曲の持ち主や奥田民生がコメントしている「メッセージ from ???」。コメントの内容自体は当たり障りのないものがほとんどだけど、スガ シカオや奥田民生,小林武史棚橋静雄(ロスインディオス リーダー)やシルビア井上順といった名前がひとつのページに並んでるってだけでちょっとシュールじゃないすか?

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2004年07月30日

気むずかしい男の黒いマホガニ

Black Mahoganiいつ注文したのかも忘れてしまった頃にやっと届いたムーディマンの新作 『Black Mahogani』 。「早く聴きてー」との思いもすっかり萎え、モチベーション下限ギリギリのところから聴き始めたけど、ふとわれに返ればそんなどっちらけムードはきれいサッパリさようなら。あー、オレ今どっか行っちゃってたよ。こりゃ麻薬的傑作だ。デトロイト・ハウス万歳 !! 垂れ流して繰り返せば人生万事It's Alright、という投げやりな開放感溢れる気分にさせてくれる。

ジャズ,ソウル,R&B,ファンク…あらゆる黒い要素をぶち込んで混ぜ合わせてシェイクして、あげく出来上がった音はシンプルに複雑で、すっきりと混沌として……ああ、脳が溶けた。。。こんな音作り(またはグルーヴ作り)は凡人にはとうてい真似できません。押し引きの匙加減がいやらしいほどに絶妙なんだなー。そして全編にまとわりつく何ともいかがわしい空気。これはヤバい。

車で聴いて、家でも聴いての大車輪。どうやら相当な愛聴盤になりそうな予感。さあ、今夜もコイツを聴いてワケのわからない世界へ繰り出すことにしましょう。

★★★★☆

とか言ってる間に早くも 『Black Mahogani II』 の予約が !!

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2004年07月29日

百面相チャーリー

レヴューの真似事を始めると、なぜか新作について書かなきゃいけないような気になるから不思議だ。時代性とか音楽シーンとかを意識しちゃうんですかね、評論家でもないのに。せめて自分のサイトの中くらいは自由気ままに振る舞いたいなーと思ってるけど、やっぱり縛られてるのね、何かに。

なので、旧作だろうが何だろうがその時気になっているモノについてコメントを残すことで無秩序さに拍車をかけたいと思う今日この頃なのですが、だからといって新作が面白くないというわけじゃない。むしろ最近はけっこう充実してるかも。

Friends Seen and Unseenギターが主役のトリオといえば残りはベースとドラムというのが普通。でもハンターはベース・ラインも自分で弾いちゃう変人さんなので、このトリオではハンターの8弦ギターとデレク・フィリップスの太鼓にジョン・エリスの管楽器が色を添えている。

音も音の隙間もクリアなサウンドで、ハンターにしてはちょっとタイトにまとまりすぎかなと思ったけど、聴き進むうちに実は全然まとまっていないことが判明(笑)。あれもルーツ、これもルーツの百面相ギターにまたしても持っていかれた。この柔らかい音楽性は頼もしすぎる。

個人的にはもっとひしゃげたハンターが好みだけど、これも “一面” と思えば充分に楽しめるのでした。

★★★☆

▽以下の記事にTrackBackしました
CharlieHunterTrio/FriendsSeen&Unseen (tokkyu2222)
Charlie Hunter;FRIENDS SEEN AND UNSEEN & Right Now Live (Funk'n Blog)

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2004年07月27日

蒲田行進曲を聴く

映画のサントラ盤というのはあまり何度も繰り返し聴いたりはしない。少なくとも私はしない。一回しか聴いてないってのもけっこうある。もちろんひとくちにサントラといっても形式はいろいろで、単なるコンピレイション・アルバムのようなもの(ハリウッド産はこれが多いですね)もあれば、くるり『ジョゼと虎と魚たち』 (2003)とか、バッドリー・ドロウン・ボーイ『About A Boy』 (2002)のように、特定アーティストの作品になっているものもある。ただ、ここで言っているのはもっと純粋なサントラ、映画で使った音楽を寄せ集めて、ときどき台詞まで入れちゃうような、そんなオーソドックスなヤツのことを指しています。

で、そういうサントラは(冒頭に書いたように)あまり何度も聴いたりはしないのですが、まれに傑作にめぐり合うことがあります。そんな名盤サントラをご紹介。

蒲田行進曲

まあ少なくとも私の同世代近辺であればこの映画を知らない人はまずいないでしょう。深作欣二監督,つかこうへい脚本による傑作人情コメディ・ドラマ(82年公開作品)。とにかく笑いあり涙ありのストーリーが単純明快で、複雑な人間模様に翻弄されることなく、ダイレクトな感情移入が可能。風間杜夫松坂慶子もあまり好きではないけど、この映画だけは別だった。

なぜそんな古い映画の話をしているかというと、この映画のサントラ、いまだにときどき聴くのです。そういう気分が周期的にやってきます。たまたま今日がその日で、車を運転しながら聴きました。そして泣きました。

泣けるんですよ、このサントラ。基本的には脚本の流れに沿って音楽を順番に収録しているだけなのだが、もともとのストーリーがシンプルなだけに、音楽を順番に聴いているだけで頭の中に映画ができあがっていきます。三ヶ所に折り込まれるシーン(台詞)の抜粋がまた効果的で、ラストの「階段落ち」に向けてジワジワと気持ちは高ぶり、涙腺は緩む。朝の通勤、すれ違う車にふと目をやれば、30男、むせび泣く。

もちろん映画を観たことがあること、さらに映画を観てそれなりに感動したことが前提条件ではありますが、これぞ正統派サントラの傑作です。オーラスの「蒲田行進曲」がカラッと晴れやかですがすがしい。泣き笑いの大拍手!

★★★★★

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2004年07月24日

アブストラクトでアヴァンギャルドでアンビエント

Junk Magic『Junk Magic』 Craig Taborn (2004)

最新作でクレイグ・テイボーン(p)が描いてみせるのは、抽象的な音の断片が渦巻くアヴァンギャルドでアンビエントな世界。つまりこんな音楽をどう説明すればよいのやらサッパリなわけだが、とにかく「保守的な耳はお引き取り願います」な内容。TZADIK(ジョン・ゾーンのレーベル)の作品かと思ったもんね。ソファに寝そべってまどろみながら聴く#7「The Golden Age」のなんと心地良いことか。

実のところ現在の自分の生活スタイルではこの音楽に浸れるシチュエイションというのはほとんどないし、良いのか悪いのかもよくワカラン曲も混ざっている。しかし普通にピアノ弾いてれば名作を作れちゃうような男が、あえてこの路線に取り組む理由、そこに興味が湧きます。彼はどこに向っているのでしょうか。とりあえず付いていくけど。★★★☆

【追記】
これからテイボーンを聴こうって人は、まずは 『Craig Taborn Trio』 (1998)『Light Made Lighter』 (2001)からにしましょう。損することはまずありません。

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2004年07月23日

ホーヴィッツ・マイ・ラブ

ひさしぶりに「TOWER RECORDS」に出向いた。ちゃんとお目当ての作品があったのだが、国内盤ばっかり、CCCDばっかり、高いのばっかり。「CCCDは買わない」とか「日本レコード協会の利益になるようなことはいっさい拒否」などと言うつもりはないけど、「選択肢がない」という現実に多大なる憤りを覚えてしまったので、手ぶらで帰宅した。

考えてみれば聴き込めていない音源もたまってることだし、散在する前にまずはそちらに取り組みましょう。

MYLAB■ MYLAB (2004)

タッカー・マーティン(太鼓系)とウェイン・ホーヴィッツ(鍵盤系)のニュー・プロジェクト。ホーヴィッツがまた何か始めたぞ、ってわけです。

タッカー・マーティンについては何も知らないのだけど、ホーヴィッツといえば少し前に別のプロジェクトZony Mashを解散したばかり。ただこの人の場合、活動範囲がだだっ広いので1個くらい失くなったところで特に寂しい思いをすることはない。その証拠にこの作品にはZony Mashの面々が大々的に参加。他にもビル・フリーゼル(g),ロビン・ホルコム(vo),ボビー・プレヴィット(ds),スケーリック(sax)など、ホーヴィッツのファンには馴染みの深い手練どもが勢揃い。こんだけ揃えばそりゃ駄作のわけがないって。

即興は控えめに、エレクトロニカとサンプリングを織り交ぜつつ、抑えの効いた、でもヒネリも効いた演奏で楽しませてくれます。感触としてはジョン・ゾーン『FILMWORKS』 シリーズに近いものを感じた。というか、これを聴くとジョン・ゾーンの音楽におけるホーヴィッツのポジションの重要性が再認識できます。

むさぼるように聴くほどの傑作じゃないけど、時々聴くには最適な音楽。

★★★☆

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2004年07月21日

奥田民生のスカイウォーカー

スカイウォーカー


  • 『スカイウォーカー』 奥田民生

ゆったりフォーク路線と「イージュー・ライダー/さすらい」系 爽やか路線をブレンドした佳曲。いつもと変わらないようでいて新機軸のようでいていつもと変わらない。例のごとく「もう少し聴いていたい」と思う頃にあっさりと締めくくるあたり、まったくもって無駄がない。

カップリングは同郷の大先輩 吉田拓郎のカヴァー。奥田民生のカヴァー・ワークはホント楽しい。この人の場合、基本的にアレンジも歌い方も原曲に忠実。なのに仕上がりは紛れもなく “奥田民生” になっているから痛快。そういえば吉田拓郎の歌のオリジナルってほとんど聴いたことないなぁ。他人が歌っているのはよく聴くけれど。

本作のフォーマットは前作に引き続き、CDとアナログ盤とDVD。CDはCCCD(レーベルゲートCD2)です。ジャケットにでっかく「cccd」と書いてあります。それにしても2曲で1,020円て…高すぎ!

★★★☆

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2004年07月15日

ブルースの真実

一昨日のポストでドルフィの初リーダー作について触れましたが、考えてみればドルフィを聴くのは実にひさしぶりで、やたらと新鮮に耳に響きます。時の流れと共に私の耳も進化したのか、風化したのか。今日もひたすらドルフィの 『Outword Bound』 を聴き続けたのでした。

せっかくなのでドルフィ絡みの強力な名盤を一枚ご推薦。


『The Blues And The Abstract Truth』 Oliver Nelson邦題 『ブルースの真実』 。こいつは本当にイカしてます。

[イカすポイント: その1] 全曲がネルソンのオリジナル
曲が書ける演奏家は強い。コテコテのスタンダードでお茶を濁す必要もない。しかもアレンジも演奏もいたってユニーク。ブルーズの約束事をあえて捻じ曲げてみせる独創精神が音となって高らかに鳴り響きます。

[イカすポイント: その2] ド派手な顔ぶれ
ネルソン(as/ts),エリック・ドルフィ(as/fl),フレディ・ハバード(tp),ジョージ・バロウ(bs)の四管が放つ凶暴なアンサンブルは思わずチビるほどの大迫力。さらにそれを支える屋台骨が、ビル・エヴァンズ(p),ポール・チェンバーズ(b),ロイ・ヘインズ(ds)というんだから文句のつけようもない。それぞれのソロ・パートが短めなのが少し残念な気もするが、そう思わせること自体が切れ味の鋭さを証明しているともいえる。

スタジオ録音作品としては限りなく “完璧” に近い一枚。
王道でもあり、異端でもある、本物の音楽。これで1,795円? 激安 !!

★★★★★

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2004年07月13日

コテコテJazz

「コテコテのJazz」ってどんなだ?

Swing Jazz? Be-Bop? キース・ジャレットのピアノなんかもコテコテと呼べるかもしれない。解釈はまちまちですが、私にとってのコテコテはやはり “スタンダード” ですね。「枯葉」とか、「My Funny Valentine」とか、有名であればあるほどコテコテ度UPです。

Erroll Garner Plays Mistyということで今日の音楽は 『Erroll Garner Plays Misty』 にした。「Misty」はメガトン級のスタンダード・ナンバーだが、ここに収録されているのが初演。つまりオリジナル。どの曲を “スタンダード” と認定するかを決めているのはたぶん渡辺恒雄だと思うけど、ここでの(録音された時点での)「Misty」はまだ単なる一佳曲にすぎない。原石ならではの素朴さが美しいです。

エロール・ガーナーのぶっ叩きピアノはけっこう好きで、Behind the Beatなどという俗称まで付いている独特のタイム感は曲によってはうざったく感じることもあるけど、ハマる時はとことんハマる。実はちょっと気恥ずかしいのだが、コテコテ度では#1「Misty」をはるかに凌ぐ定番ポピュラー曲 #3「You are my Sunshine」の娯楽志向満開な弾きっぷりがお気に入りだったりする。この曲をこんな風に弾ける音楽の先生がいたら最高にFunkyだ。いないけど。

★★★☆

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朝方Jazz

4時半起床、5時半出発。これが今日のスケジュール。早朝の出勤はまだ車も少なく、静寂の名残を味わうことができる。そう、こんな時こそジャズです。

『Outword Bound』 Eric Dolphy本日のお伴はエリック・ドルフィの初リーダー作、 『Outword Bound』 (1960)。ドルフィは大好きなプレイヤーの一人ではあるけど、この作品に関して私のお目当てはフレディ・ハバードのラッパである。朝もやを突き抜ける管の咆哮。寝ぼけた脳がシャキっと目覚める。しばらくは古いジャズでも聴いていようか、という気になった。★★★★

明日も同じ時間に出勤だ。コテコテのジャズを聴こう。

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2004年07月11日

稲妻とDerek Trucks Band

今日の帰り道は凄まじい稲光が断続的に炸裂し、昼と夜の境界線が暴走しているかのような怪奇的なドライヴだった。多分ガラガラピシャンととんでもない雷鳴も轟いていたことと思うが、こちとらデレク・トラックス・バンドのライヴ音源を非常識なほどの大音量でブッ放していたのでまったく聞こえなかったよ。

無節操に種々雑多な音楽に手を出してはいるものの、詰まるところ私は常にギター・ヒーローを追い求めているのです。昨年から盲目的に愛聴してきたロバート・ランドルフ・アンド・ザ・ファミリー・バンドも、聴き込むほどにランドルフのペダル・スティールは痛快だけどファミリー・バンドの演奏はイマイチだということに気付かされるわけで、ちょっと悶々としていたところへガツンときたのが若干24歳のブルーズ・マン、デレク・トラックス。若者にあるまじき絶妙な押し引きのバランスと、“ブルーズひと筋”とはひと味違う柔らかいフレーズにクラクラっと来ました。ブルーズ・ギターの弾きまくりって、なんでこんなに気持ちいいんだ。

ちなみに本日堪能したのはLive Music Archiveでダウンロードできるこのセット。これ以外のセットも豊富に揃っているのでぜひお試しあれ。あまりに気に入ったので早速CDも発注しました。われながらなんて健康的な無料ダウンロードの楽しみ方だ。

デレク・トラックスを聴くきっかけとなったのはhidemuzicblogこの記事。さらにhidemuzicさんがデレク・トラックスにインタヴューしたこの記事を読んでおけば予習もバッチリよ。

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2004年07月06日

FiLM iNG / Bugge Wesseltoft

FilM iNGオススメの音楽を聞かれて「ブッゲ・ヴェッセルトフト」と答えると、たいていは「マニアックだなー」といった類の反応が返ってくる。英語圏以外の名前は、オリコンやビルボードを根城にしている音楽ファンの方々の耳には奇妙に響くらしい。その点サッカー・ファンは耳が英語圏以外の名前で馴らされているので便利だ。グリエルミンピエトロとか、フランソワ・オマンビイクとか、ピエルルイジ・カシラギとか、イブラヒム・バとか…。 (以上、頭に浮かんだ順)

北欧ジャズに少しでも興味のある人からすれば、「ブッゲ・ヴェッセルトフト」という名はマニアックどころか、メジャー中の大メジャーである。自ら主催するレーベル「Jazzland」を舞台に、「New Conception of Jazz」を旗印として、ジャズとエレクトロニカの有機結合に黙々と取り組んでいる。 (本作を聴く限りでは、すでに完成していると思える)

どことなく知的で近寄りがたい印象のある「北欧ジャズ」 (「北」という字面からくる短絡的な連想のような気もするけど…) において、ブッゲの創り出す間口の広い “Jazz” は確実に聴き手の枠を広げたと思う。ジャズとエレクトロニカがアクロバティックに化学反応を起こすわけではなく、ごく自然に同居している落ち着いたたたずまいがどこまでも心地良い。BGM代わりにサラッと聴き流してもよし、スピーカーの前に陣取ってどっぷりと深く聴き溺れてもよし、あらゆる場面にミラクル・フィットするユティリティ・ジャズ・アルバム。音のすきまがポロリポロリと美しいブッゲのピアノで、蒸し蒸しとうだる夏を乗り切りましょう。

「これが今どきのジャズなの?」

そんなことは私にはわかりませんよ。

★★★★

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2004年06月02日

ロス・ロボスとえらく豪勢な仲間たち

『The Ride』 Los LobosThe Ride Los Lobos [2004]

先週やっと届いたロス・ロボス。5月6日発売となっているから、かれこれ20日近く経過したことになる。これじゃあんまり「予約注文」した意味無いね。頼むぜ、Amazon。

さて、今回のロス・ロボス新作は豪華客演陣を迎えての作品集(セルフ・カヴァー+新曲)。 そのゲストの豪華さが並じゃない。トム・ウェイツボビー・ウォマックエルヴィス・コステロリチャード・トンプソンルベーン・ブレイズメイヴィス・ステイプルに……と、筋金入りの大御所さんたちが勢揃い。あまりの威圧感に思わずのけぞる。

ゲストのアクが強すぎるのか、ロス・ロボスが気を遣いすぎたのか、単品の出来はともかくとして、アルバムとしての統一感はまるで無し。コステロやルベーン・ブレイズとの曲なんて、ロス・ロボスの方がゲストみたいだ。

そんな中、ギラリと黒光りするのがボビー・ウォマック。老練のソウル親父とロス・ロボスの捻り出すファンクネスがガチンコ・タイ・アップ。ただ “一緒に演っている” だけではない何かが聴こえてきます。これぞコラボレイションなり。

あくまで企画モノっぽい作品ではあるけれど、ほどよくキャッチーで聴きやすく、ドライヴにもばっちりフィット。ロス・ロボスと聞くといまだに「ラ・バンバ」しか思い浮かばない不幸なアナタ。そんなアナタにぜひ聴いて欲しい。(★★★☆)

▽TB
The Ride/Los Lobos ...「Paradise and Lunch」
Los Lobos + Richard Thompson ...「"Tadd"pole galaxy」

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2004年05月22日

サウンド・オブ・ミュージック・オブ・奥田民生

サウンド・オブ・ミュージックサウンド・オブ・ミュージック 奥田民生 [2004]

 いつも通りの奥田民生です。特に今までと変わったところはありません。でもそれで良いんです。シンプルなロックン・ロールに乗せた音楽愛好家の心。この曲とか「マシマロ」とか「And I Love Car」とか、そんなのばっかり20曲ほど作ってアルバムにして欲しい。

 カップリングは井上陽水「最後のニュース」のカヴァー。矢沢永吉の時もスピッツの時も思ったけど、ホントこの人は自分の曲のように歌うね。(★★★★)

 ところで今回はじめて「レーベルゲートCD2」仕様のCCCDを買ったわけですが…

 何の小細工もなくリッピングできました。なんなんだ、いったい。たまたまツールやドライヴとの相性が良かったんかね。

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2004年05月10日

ジミヘン 炎のトリビュート

ジミヘン 炎のトリビュートTribute to Jimi Hendrix: Power of Soul

 プリンススティングクラプトンレニー・クラヴィッツEW&Fサンタナ

 孤高の目立ちたがり屋 “ジミヘン” の名のもとに、金を稼げる豪華なメンツが顔を揃えた必殺トリビュート。全体的にお行儀良くまとまっちゃってる感は否めず、「ディープにリスペクトしつつもブッ壊れたアレンジ」を期待する向きには消化不良かもしれませんが、まあ個々の持ち時間が少ないのがオールスター・ゲームの宿命なので、そこは我慢しましょう。でもランドルフブーツィに関しては、この倍は聴いていたかったな。

 しかし、そんなウヤムヤを払拭してくれるのがラストを飾るスティーヴィ・レイ・ヴォーンのライヴ音源。さすがに今さら「もうちょっと短くしてくれ」とスティーヴィにお願いすることは出来ないので (故人なので) 、心置きなく堪能することができます。イカシてます。(★★★☆)

最後に曲目リストを。

ミュージック,プリンス,EW&Fあたりは巧みなアレンジ力で聴きやすくまとめてくれています。スティング,クラプトン,クラヴィッツはあんまり存在感ありませんでした。

1.James“Al”Hendrix / Gratitude
2.Musiq / Are You Experienced?
3.Santana featuring Corey Glover / Spanish Castle Magic
4.Prince / Purple House
5.Sting / The Wind Cries Mary
6.Earth Wind&Fire / Voodoo Child (Slight Return)
7.Bootsy Collins featuring George Clinton&the P-Funk All-Stars / Power Of Soul
8.Eric Clapton / Burning Of The Midnight Lamp
9.Lenny Kravitz / Have You Ever Been (To Electric Ladyland)
10.James“Al”Hendrix / 30 Years
11.Devoted Spirits featuring George Duke / Who Knows
12.Robert Randolph&The Family Band / Purple Haze
13.Velvert Turner / Going Home
14.Chaka Khan&Kenny Olson / Little Wing
15.Sounds Of Blackness / Castles Made Of Sand
16.Eric Gales / May This Be Love
17.Cee Lo / Foxy Lady
18.John Lee Hooker / Red House
19.Stevie Ray Vaughan & Double Trouble / Little Wing,3rd Stone From The Sun

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2004年05月05日

労働の後にビール片手に聴きたい音楽No.1─The Dirty Dozen Brass Band

We Got Robbed!We Got Robbed! -Live in New Orleans- The Dirty Dozen Brass Band [2003]

 酒も飲めず、デスク・ワーク中心の仕事に就いている私が言っても説得力はないが、DDBB(The Dirty Dozen Brass Band)を聴くといつも「今日も一日お疲れさん。まあ冷えたビールでも飲んでゆっくりしていきな」とねぎらってもらっている気分になる。 “労働の後” ってところがポイントで、決して爽やかな休日などではない。90年頃にWOWOWで放映されたニューオリンズの巨大音楽フェス「ニューオリンズ・ジャズ&ヘリテイジ・フェスティヴァル」(毎年開催)で観たDDBBのステージがいかにも “仕事帰りに立ち寄りたい” 感じで、それ以来DDBBといえば未だにそのイメージなのだ。

 本作は03年5月、ニューオリンズ「TwiRoPa」でのDDBBのライヴ音源。全9曲、70分強の横揺れ体験。導入部やソロ・パートはさておき、やはり迫力は管楽器の大群が凶暴に暴れまわる混沌(カオス)パート。重低音を維持しつつ聴きやすくまとめたミックスもイイ感じ。やってることは10数年前と変わってないのだが、 “ジャム・バンド系” なんてのが流行ったおかげでDDBBの音も多少は受け入れられやすくなってるんじゃないだろうか。ギャラクティックソウライヴなんて聴いてる場合じゃないよ。(いや、聴いててもいいけど。) これこそはアルファ波やシータ波なんぞとは別次元の究極のリラクゼイション・ミュージックなのである。(★★★★)

 最新作 Funeral for a Friend も既に予約発注済み(国内盤は既発)。到着を待つのみ。早く聴きたいが、待つのも楽しい。

▽このアルバムへの他の方のコメント発見のコーナー
New Orleansに血が騒ぐ (satoさん)

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2004年04月30日

理解不能系無国籍楽団、再来

『Shopping』 3 Mustaphas 3 ■ SHOPPING 3 MUSTAPHAS 3 [1987]

 胡散臭さ120%の無国籍楽団 3ムスタファズ3 の代表作(87年)が実に17年ぶりの再販であります。

 87年といえば “ワールド・ミュージック” なるブームが幅をきかせていた頃で、それまで歌謡曲とロックと少しばかりのジャズくらいしか聴いたことのなかった私は、ユッスー・ンドゥールサリフ・ケイタの鋼鉄の喉にタコ殴りにされて、ただただ面喰らうばかりでした。そんな私に「まあ小難しいことはさておき、世界にゃオモロい音楽がいっぱいあるってことよ」と、したり顔で教えてくれたのが3ムスタファズ3。そう言ってる彼らがいちばん不可解だったわけだけども。

 さて、久方ぶりに聴いたこの作品がどうだったかというと、「あれ?こんなにスッキリしてたっけ」と、記憶とは食い違うわかりやすさに少なからず拍子抜け。こちらも知識が増えた分、不可解度が多少は薄らいだってことですかね。でも、そんな戸惑いは最初のうちだけ。#4「A Night Off Beirut」あたりから徐々に気分がノッてきて、あとは素直に万国博覧娯楽音楽ショーを懐かしみつつ楽しんだ。

 今回の再販にあたり、ライナーノーツにメンバーの一人 ヒジャズ・ムスタファ へのインタヴューが掲載されている。いつインタヴューしたのか明記してないのは手落ちだと思うが、つい最近のものであることは間違いなく、3ムスタファズ3はとにかく謎に包まれた楽団だったので、非常に興味深い内容になっている。こういう特典があってこそ、国内盤を買う意味があるってもんだ。(★★★)

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2004年04月28日

くるり、アンテナ、ロックンロール

アンテナアンテナ くるり (2004年作品)

 最近は毎日最低1回はこのアルバムを聴いている。が、いまいちノリきれていません。ドラマーも正式に加入し、これまでとはひと味違う芯の通ったロックンロール・アルバム。くるりの “本質” というか “底力” を見せられたような気がして「さすが!」とは思うのだけど、あの雑食性のとっ散らかった感が懐かしくなったりもするんだな。

 まったくのうろ覚えだけど、確か 『TEAM ROCK』 を出した後くらいに、どこかのインタヴューで岸田繁が「今までは黒人音楽の要素を意識して排除してきたけど、次回はそれを前面に押し出す」という主旨のことを言っており、個人的にその方向に大いなる期待を寄せていただけに、今回の方向性にはちょっと複雑な気分なのです…。とか言いながら聴いてますけどね。

 もちろん、開運おみくじが「凶」だったからといって難癖をつけているわけではありません。(★★★)

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2004年04月26日

Jack O The Green Small World Big Band Friends 3 /Jools Holland & his Rhythm & Blues Orchestra

Jack O The Green 本格娯楽系鍵盤おじさんのジュールズ・ホランドが、本当に友達かどうかは定かでない友達を集めて新味はないけど良質な音楽を楽しくぶっちゃける音楽絵巻の第三弾。今回も壮麗なる客人たちが名を連ねております。ジュールズ関連の人脈だけに自然とベテランが多めのラインナップになるのは最初からだが、それにしても今回は渋い。というか、古い(笑)。せっかくなのでゲスト陣の名前を列挙してみましょう。

バディ・ガイ/テリ・ウォーカー/スモーキー・ロビンソン/デイヴィッド・グレイ/ソロモン・バーク/エリック・クラプトン/シェイン・マゴウワン/スティーヴ・アール/ニック・ケイヴ/サム・ブラウン/ポール・ロジャーズ/シュガベイブズ/リンゴ・スター/ルビー・ターナー/プリンス・バスター/イライザ・カーシー/マイケル・マクドナルド/キャンディ・ダルファー/カースティ・マッコール/ピーター・ゲイブリエル/サッグス/ロニー・ウッド/ジミー・スコット

 うわっ、渋っ。ニック・ケイヴが若手に思えてしまうね。

 このアルバムにはシーンを牽引するような要素は何ひとつないけれど、熟成されてるがゆえの余裕しゃくしゃくなハジケっぷりが心地良いのです。両親や学校の先生と一緒に聴いてもサマになる貴重なアルバムなのだ。

 そしてトピックは2000年に事故死したカースティ・マッコールの81年録音未発表音源のお蔵出し。さらにこのアルバムにはシェイン・マゴウワンの名前まであるわけで、ついつい二人が歌ったクリスマス・ソングの名曲「Fairytale of New York」(ザ・ポーグスの87年傑作アルバム 『If I Should Fall From Grace With God』 に収録)を思い出さずにはいられない。なんだかジーンときてしまいました。2003年作品。(★★★☆)

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2004年04月21日

Baggage /Dubtribe Sound System

Baggage 『ミュージック・マガジン』 誌のベスト・アルバム 2003 [ハウス/テクノ/ブレイクビーツ]部門で1位に輝いた作品。その情報だけをあてにして購入し、ここひと月ほど結構な頻度で聴き続けた。

 ジャケット写真からも予測がつくが、非常に“白い”ハウス・サウンド。これはとても良い。もちろん“黒い”音が嫌いなわけじゃないけど、すっかりスタイル化された「Hey! Man」だの「Yo, Bro!」だのが上滑りするマスターベイション・ブラック・ミュージックにはいい加減うんざりなのだ。もちろん「白」,「黒」というのは肌の色ではなく、音の色であります。

 このアルバム、コラージュ的に使われるヴォーカル(ヴォイス)のエコーが過剰すぎて聴くほどに萎えてくる。ただし、バック・トラックの方は後半にいくほどに冴え渡る。この微妙なバランスが吉と出るか凶と出るか。私の場合、やや“吉”と出たかな。(★★★)

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2004年04月20日

Come in Red Dog, this is Tango Leader /Charlie Hunter & Bobby Previte

 2003年作品。変則8弦ギターのチャーリー・ハンターボビー・プレヴィットの電気ドラムのコラボレイション。この二人の名と「ropeadope」(ローパドープと読む。ジョン・メデスキー,DJロジック,ザ・ダーティ・ダズン・ブラス・バンドなどの要注目アーティストの作品を精力的にリリースしてくれる要注目レーベル)の名を見た時に感じた胸の高鳴りは、聴き終わる頃にはちょっとしぼんだ。良くも悪くもローパドープな音になっており、二人とも歪み具合が中途半端だ。淀んだ音像とノスタルジックな香りに愛着はわくが、この二人ならもっと凄いことができたはず、という思いは捨てられない。 (★★★)

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